福岡 霊園 お墓 永代供養なら二見ヶ浦公園聖地

  • 文字の大きさ
  • 標準
  • 拡大

092-327-2408

糸島周辺情報

TOP

>

糸島周辺情報

>

いとしま伝説の小径

>

深江のオキしゃん ~キツネの難産を救った産婆~

いとしま伝説の小径

深江のオキしゃん ~キツネの難産を救った産婆~

大正時代の初め、二丈町深江の正覚寺の横に『オキしゃん』と愛称で呼ばれる一人暮らしの産婆さんが住んでいた。


ある冬の夜、少し早いが休むことにしようと思い、床を敷いていると、木戸がトントンと鳴る。オキしゃんは小太りの体をすくめて戸を開けると見知らぬ男が立っている。「どなたかいな」と尋ねると男は大変せいた様子で。「妻がお産でひどく苦しんでいます。助けてください」「難産なら急がなぁならん、あなたァどこ?」「遠くはありません。案内します」と、せき立てる。全く知らない男だし、不審に思ったが人の良いオキしゃんは行く事を承知した。


道具を入れた風呂敷包みを持って一歩外に出ると、男はもう先を急いでいる。「よほど奥さんのことが心配なのだろうよ」と、オキしゃんんも小走りで急ぐ。月は陰っているが道だけは妙に明るい。東の福永の方へ向かっていることだけは確かだ。急いでいるせいか、冬の夜の寒さを感じないし、走っているのに一向に息の弾む苦しさも覚えない。


野道を走り、橋を渡り、坂を上るなどして小高い丘の木立の中に入ると、この男の小さな一軒家が有った。中に入ると、奥の間に嫁が苦しそうな呻き声を出して寝ている。難産には何回も立ち会ったが、こんなに苦しんでいるのを見たのは初めてだ。すると男が「お産婆さん、私の手振り通りに妻の処置をして下さい」と言うので、その通りに妻の介抱をし、やっと赤ん坊が生れた。


難産だったが母子ともに無事で、おまけに男の子だったので男は大変な喜びようで、こんな家にと思われぬ御馳走と酒を祝いの膳としてオキしゃんに振舞った。難産を無事切り抜けた喜びも有って、酒も美味しく思え、そのうち酔いもまわり「今夜は遅いから泊まって下さい」と言われるまま、その場に眠ってしまった。
…「おお寒っ!」白みかかった夜明けの森の中に寝ていた自分に気がついた。柔らかい布団…それは枯れ草やわら屑。周りには昨夜の食べ残しの御馳走が、木の葉に盛られて並んでいる…。きっとキツネに化かされたのに違い無い。ここは何処だろう。考えるうちに震えが始まった。


急いで森を出ると、丘の上から福永道と正覚寺の屋根が見える。「ここは城山か!」城山にはキツネが居て、キツネ火がよく出るとも聞いている。どのようにして帰ったか分からない程慌てて家に帰ったオキしゃんはグッタリと寝込んだ。
それから数日経った夜更け、いつの間に上がり込んだのか、先日の男が中居に座っている。オキしゃんはヘナヘナと座り込むと声も出ない。


「怖がらないで下さい。私は城山のキツネですが、今夜はお礼に上がったのです。先夜は難産を助けてもらい有り難うございました。実は私、難産手当ての秘方を知っていたもののキツネの悲しさ、人間ほど手先が器用ではありません。それであなたにやってもらったのです。あの夜、私があなたに教えた事、決して人に話してはなりませんよ」と言い終わるが早いか男は煙りのように消えていった。


オキしゃんは、不思議と今は恐ろしいとは思わなかった。ただ何回となくあの夜の男キツネの仕草を思い返したのだった。
それからのオキしゃんの助産の上手なことは近隣の評判になり、ひどい難産もオキしゃんの手に掛かるとみんな無事に出産が出来たのだった。

©FUTAMIGAURA Foundation.All Rights Reserved.